除夜の鐘の謎に迫る物語 パート1(不思議なボンとの出会い)

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あらすじ

粉雪が深々と降る真冬の大晦日。
毎年、深夜になると除夜の鐘が鳴らされる。

その鐘は『梵鐘(ボンショウ)』
正式に呼び、
清らかな鐘と言い伝えられている。

そこから響く音に耳をすませると、
頭のモヤモヤがスゥ〜っと取れたような
不思議な感覚になり、
心が清らかになるらしい。

その音の正体が姿を現わすという
古来から言い伝えられるパワースポットが
日本から遠く離れた海の上にあった。

しかし、その正体は未だにナゾで
世間に知れ渡っていなかったのだ!

そこで、鐘の音が大好きな『カネ坊』は、
その正体がとても気になり始めて、
雪赤丸に案内をお願いした。

仏教に詳しい『雪赤丸』
そのスポットについて少し知っていたので、
「ボウヤの修行のために」と言って、一緒に鐘の音の正体を探る旅に出たのであった❗️

そのパワースポットは

彼らは船を出し、1週間もかけて
ようやくたどり着いたのであった。

この物語はカネ坊と雪赤丸が
鐘の音の正体を解き明かしながら、
忘れかけた日本の文化・心を
面白おかしく、そして時には美しく
問い直すものである。

梵鐘(ボンショウ)に到着

梵鐘に到着

図1)梵鐘に到着

蓮(ハス)と梵(ぼん)の意味

そこには不思議な梵鐘(以下、鐘とする)が
蓮の花の上に乗り、プカプカと浮いていた。
カネ坊はふと疑問に思って、こう言った。

「鐘って重いし、沈むやろー」ってさ。
それについて、雪赤丸がこう説明したのだ。

雪赤丸
「この花の生命エネルギーはとても強く、
この程度の重さでは沈まないのだ」

「というのも、蓮(ハス)
汚い水でも花を咲かせる生命力があるのだ。
いくら環境が悪くてもそれに染まらずに、
清く生きることを蓮から学ぶのだ」

っと説いた。

カネ坊はそれを聞いて、こう思った。
「なるほど、
悪い誘惑があっても、それに打ち勝つ心、
つまりは清い心を育むことが大切なんやな」

「自身の蓮を咲かせる姿勢を
忘れないようにしよっっと♫」

雪赤丸は
カネ坊が十分に理解してくれたことで、
上機嫌になり、さらにお説法を続けた。

雪赤丸
「その蓮の上に乗った梵鐘の梵(ぼん)とは、
サンスクリット語で「Brahma=神聖・清浄」
を音訳した文字
と言われているのだ。」

「このことから梵鐘は
神聖なモノ、清浄なモノ
として、
古くから使用されてきたことを
覚えておくのだ」っと説いたのだ。

しかし、
カネ坊はいまいちピンとこなかった。

カネ坊
「丸さん何が言いたいん?」っと問うと、

雪赤丸
の意味合いが似ていて、
相性ピッタリってことだ。

まるで蓮からオギャー!って
鐘が生まれたようにも見えるし、
それを鳴らしたらオギャー!と響くだろうw」

雪赤丸の妄想が激しくなり、
カネ坊の頭がパンクしそうであった。

頭を休めるため、カネ坊は、
しばらくジィ〜っと
蓮の美しい姿を眺めることにした。

すると、鐘の上に何かがいることに
気が付き始めたのであった。

鐘に住むモノ

目が覚めたボン

図2)目が覚めたボン

鐘に住むモノは『ボン』と呼び、
カネ坊達の気配に気付いて、
目が覚めたようであった。
そして、何やらクチャクチャと食べ始めた。

食事中のボン

食事中のボン

図3)食事中のボン

雪赤丸によれば、
ボンは清らかな心を持つ聖なる存在
言われているようだ。

しかし、
クチャクチャと音を立てながら食す姿から、
あまり、お行儀が良くないモノと
カネ坊はふつふつと感じていた。

しばらくすると、
ボンが奇妙な動きを始めたのであった!

ボンの奇妙な動き

奇妙な動きをするボン

図4) 奇妙な動きをするボン

カネ坊達は
空中をフワァ〜っと舞うボンの動きや、
その体の一部が、
ユラユラ〜スゥ〜っと離れていくことに
ギョッと驚いた!

カネ坊
「これはボンの体が異常に軽いから、
風で飛ばされているのであろうか?」

好奇心が強いカネ坊は
それを確かめるため、
雪赤丸から伝授された技を
初めて使うことにした!

その名は笠弧地蔵(カサコジゾウ)だ!

腰をグゥっとひねり、
鍛え上げた足腰で体を回転させ、
そこから生じる凄まじい遠心力と
手首のスナップを活かして
技を放ったのだ!

雪赤流 笠弧地蔵(カサコジゾウ) 発動

雪赤流 笠弧地蔵

図5) カネ坊の技 発動

笠弧地蔵(カサコジゾウ)の特徴は、
高速回転した笠が弧を描きながら
ブーメランのように戻るのである。

カネ坊は技の威力やコントロールを
向上させるため、3年間の修行を通じて
やっと体得したのであった。

重い岩を引きずりながら歩いたり、
お経を唱えながら
滝に打たれて精神を鍛える稽古・・・。

これら修行の思い出が、
技を繰り出す直前に
フツフツと込み上がったのだ。

カネ坊の手から放たれた笠は、
凄まじい回転力で空間を切り進み、
ボンへと急速に近づいていった。

一方、ボンは食事に夢中になっていたので、
その接近に全然気付いていないようであった。

「当たれ当たれ」っと願うカネ坊は
ドキドキしながら、結果を待った。

雪赤流 笠弧地蔵の効果

技の効果

図6)技の効果


高速回転した笠はボンに命中したようであった!

そのことを確認した瞬間、カネ坊は

よっしゃー❗️

っとガッツポーズであった。

修行の成果が出たことで有頂天になったが、
その直後、おかしいことに気づいた!

カネ坊の予想では、
ボンに命中すると、
それが遠くへ飛ばされていくと
予想していたのだ。

しかし、
その体は空気中に消えていくように
見えたのだ。

さらに、しばらく経つと、
消えたはずの部分が
また元に戻ろうとしていたのである!

異常な現象を目の当たりにしたカネ坊は
キョトンとあっけにとられていたが、
雪赤丸は冷静にその現象を
考察したのであった。

雪赤丸による技の考察

雪赤丸は
まず技の結果を整理することから始めた。

①通常は体が宙に浮いていること。

②笠が当たった時に、
体が空気中に消えたこと

③空気中に消えたトコはまた元の体に戻ること

①から、ボンの体は、
空気と同じくらい軽い成分
できていると考えられる。

②から、
その軽い成分は空気中に消えるので、
気体状の可能性がある。
しかし、100%完全に気体状であると、
空気中に消えたままとなるだろう。

そこで③のように、
姿、形を作るには
固体の性質も必要である。

さらには、ネバネバしたスライムみたいに
柔らかく動きやすい性質もあると、
気体にも急激に変化しやすいだろう。

ボンの体の構造

上記から、
ボンの体は、ネバネバしたスライム状
フワフワした気体状
自由自在にコントロールして、
出来上がっていると雪赤丸は考えた。

それをふまえた上で、
技を受けた時の現象を振り返ってみよう。

通常は、
スライムと気体が混ざり合って、
プカプカ浮いている状態だ。

そこへ高速回転の笠が当たると、
スライム状から完全に気体状へと急激に変化させて、
体を空気中に溶け込ませて消えた後、

その溶けた気体を
少しだけスライム状に変化
させることで
形が作られ、元通りのボンに戻ったと雪赤丸は考えた。

時間を巻き戻し、
ボンの体の変化にグゥっとしぼって、
以下に図示したので見てみてね。

 ボンの体の変化

図7)ボンの体の変化

技を受けた後のボンの様子

雪赤丸はとても面白いボンの体を知り、
ますますボンに興味を持った。

一方のカネ坊は事態を
まだ理解できていないようであった。

それだけでなく、
エサを落とされたことが原因なのか、
ボンがドンヨリとした異様な空気を
醸しながら、ジィ〜っとカネ坊を見つめていた。

その視線に、カネ坊は
ブルブルと恐怖に震えていた。

しばらくすると、
ボンは何やら道具を取り出して、
ドンドンと近付いてきたのであった。

しかも、何やらブツブツとつぶやいているようだ・・・

カネ坊に接近するボン

接近するボン

図8)接近するボン

ボンのつぶやきにより、
さらにカネ坊はビビってしまい、
ガクガクの状態になっていた・・・

その様子を雪赤丸は冷静に眺めており、
何とかカネ坊を落ち着かせようと
していた。

そこで、まずはボンのつぶやきを
整理することから始めたのであった。

『闇に迷いし哀れな欲』について、
とは、
人の心を乱すはたらきをする煩悩(ボンノウ)の一種で、
ボンは煩悩に対して、
闇や哀れみを感じたのであろう」

雪赤丸はこのように理解し、
カネ坊に説き始めたのであった。

『おーい❗️ボウヤァ〜❗️
ボンは煩悩に対してつぶやいたのであって、
ボウヤに対してではないで❗️
だから落ち着くのだ❗️』っと説いた。

しかし、
恐怖にガクガク状態のカネボウの耳には
届いていないようであった。

そして、カネ坊の目の前に到達した瞬間、
ボンがこう言い放った!!

カネ坊の目の前にきたボン

目の前のボン

図9)目の前のボン

内容からすると、
ボンが手に持っていたモノは
「木づち」であった!
しかも、その真ん中に
不思議な文字があった。

いったいこの文字は何なのか?
この木づちで鐘を鳴らすことで
何が起こるのか?

次回パート2をご期待ください!